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スピード系表ソフト『スペクトルシリーズ』の秘密

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スピード系表ソフト『スペクトルシリーズ』の秘密

スピード系表ソフトの代名詞「スペクトル」、扱いやすさと安定性に優れた「スペクトル・21sponge」、速攻らしいスピードを引き出す「スペクトル・スピード」、軽量高反発と心地良い打球感の「スペクトル レッド」、攻守のバランスに優れた「スペクトル ブルー」。
現在、スペクトルシリーズはスポンジ硬度が違う5種類を展開している。
具体的にどのような違いがあるのか、まずはスペクトルシリーズの要「スペクトル」について迫っていこう。

1972年に発売された『スペクトル』だが、発売から半世紀近くたった今もなお幅広いユーザーから愛される、表ソフトの代名詞だ。
『スぺクトル』の開発コンセプトは「安定感がありつつ、変化が出る表ソフト」だった。TSPにはもともと粒が太くて安定性重視の『ファイナル』と、粒が細くて高い変化重視の『スピンエース』という2枚の表ソフトがあり、『スペクトル』はその2枚の中間を目指して作られている。
ナックルが出るのに安定するという表ソフトとして理想的な『スペクトル』の性能は初級者のみならず上級者までも虜にした。
現代卓球は裏ソフトの両ハンドドライブ型が主流となり、表ソフトの使用者は減ってきている。その少数派の中、攻撃力や飛距離を高めたテンション系の表ソフトの台頭がありつつも、なぜ『スペクトル』は選ばれ続けるのか。
『スペクトル』の秘密を解説していこう。

表ソフトの粒形状

表ソフトの粒形状は大まかに「円錐台タイプ」、「円柱+円錐台タイプ」、「円柱タイプ」の3つにわけることができる。
スピード系の『スペクトル』は、円柱+円錐台タイプになっている。ちなみに円錐台タイプは回転がかかるようになり、円柱タイプになると変化が出るようになる。そのため、変化を重視する粒高はほとんどのラバーが円柱タイプになると変化がでるようになる。

縦目
布目

そして表ソフトは粒配列も大切になる。一般的にスピード系は縦目、スピン系は横目と言われており、『スペクトル』は縦目の配列。また、粒の表面にある布目は、滑りにくさや回転量を生み出すといわれている。『スペクトル』の布目は深すぎず、回転と、球離れの良さのバランスをとっている。

次に『スペクトルシリーズ』はそれぞれにどのような特徴があるのか解説しよう。

高弾性ハイスピード表ソフト

『スペクトル』、『スペクトル21・sponge』、『スペクトル スピード』、この3種類は3つとも『スペクトル』のトップシートを採用しているが、スポンジ硬度に違いがある。

スペクトル

スペクトル

 スピード系表ソフトの代名詞ともいえる名品。両ハンドのスマッシュ&ナックル性ショートの変化とコントロールのバランスに優れ、安定感が抜群。
トップ選手からも熱い支持を集める。
球離れが早く、変化も出るためシェークバック表の選手におススメ。

スペクトル21・sponge

スペクトル21・sponge

数々のチャンピオンを生み出した『スペクトル』に「21・sponge」を使用。38㎜ボールから40㎜ボールへと変更された際に開発されたラバーで、『スペクトル』に比べて軟らかいスポンジに変更された。表ラバーでも回転をかけたい選手やシェークバック表の選手だけでなくシェークフォア表の選手も満足のいく攻撃プレーが可能。
また、裏ソフトから表ソフトに変更する人や初めて表ソフトを使う人にもおススメ。

スペクトル スピード

スペクトル スピード

『スペクトル』に比べてスポンジ硬度が硬く、威力のあるハードヒッター向け。
相手の攻撃の影響を受けにくく、ブロック時には高速ナックルボールが可能。
木材ラケットとの相性が良く、バックで変化をつけ、フォアで攻撃をするシェークバック表の選手におススメ。

スピード系テンション表ソフト

『スペクトル レッド』、『スペクトル ブルー』、どちらとも『スペクトル』のトップシートを継承しているが、上記で紹介した『スペクトル』との違いはスポンジ硬度とテンションの強さだ。

スペクトル レッド

スペクトル レッド

『スペクトル』のスピードと変化に優れた粒形状を継承したシートにテンションを加え、日本製独特の軽量・高反発なスポンジを合わせた。『スペクトル ブルー』に比べてスポンジ硬度が軟らかめで軽打から強打まで攻撃的打法を中心とした速攻プレーで威力を発揮する超攻撃型表ソフト。
心地良い打球感が特徴でシェークフォア表やペン表の選手におススメ。

スペクトルブルー

スペクトルブルー

『スペクトル』のスピードと変化に優れた粒形状を継承したシートにテンションを加えた。そこに先端技術の強度が高い日本製スポンジを合わせることでボールに重たさが加わったスピン系表ソフト。
『スペクトル レッド』に比べてスポンジ硬度が硬く、テンションで抑えているため、ナックルが出しやすく攻守のバランスに優れている。バックでチャンスをつくり、フォアで攻撃するシェークバック表の選手におススメ。

使用者&開発担当者の見解

天野 優(サンリツ)

天野 優

「重いナックルが出る!自分次第で球質を操れるラバー」

私は小学1年生の時から『スペクトル』を使っています。『スペクトル』の良さは、自分の技術次第で様々なボールを出すことができます。使えば使うほどいろいろできるようになるのがスペクトルの魅力です。
他の表ソフトに比べて重いボール、沈んでいくような重いナックルが出るのも良いですね。相手のドライブに対してボールの横をとらえ滑らせると重いナックルになってくれるのです。
欠点はテンション系の表ソフトよりもミート系の打法は遅い。そのため、私はスポンジが軟らかい『21 sponge』にして、ミートのスピードを出しています。縦目で全部ナックルになってしまう表ソフトだと思われがちの『スペクトル』ですが、自分次第で球質を操れる万能ラバーなんです。

株式会社VICTAS 製品本部 仲村錦治郎

「プラボールは表ソフトにチャンスあり。変化は相手から時間を奪う!」
表ソフトを選択している選手は、なにより勝つことを一番に考えています。ラリーが続いて気持ちいいのは裏ソフトですから、表ソフトを使う以上、自分のやりやすさよりも相手のやりづらさを優先しているのです。つまり変化がつくのに、自分がやりやすいラバーが理想の表ソフトと言えるでしょう。
『スペクトル』はコントロールがしやすいのに、ナチュラルに変化してくれるため、表ソフトの理想形に近い。プラボールになり、表ソフトは不利になっていると聞きますが、私はまだまだ戦えると思います。表ソフトは変化という武器があります。ボールを変化させることで、相手は一本一本見極めなくてはなりません。相手に判断させること、それは相手から時間を奪うことなのです。

変化と安定性の両立だけでなく、戦型を選ばずそれぞれのプレースタイルに合う一枚が見つかる『スペクトルシリーズ』。
表ソフト愛用者やこれから表ソフトを使ってみようとしている選手はぜひ一度手に取ってみていただきたい。



(卓球王国2016年7月号から転載)