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村松雄斗がブンデスリーガ前半戦最多勝。個人成績首位でついた異名は「ミスター・ツーポイント」 来季は強豪ザールブリュッケンとの契約も決定!

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試合をしている村松雄斗選手

ドイツ・ブンデスリーガ2022-2023シーズン前半戦が昨年12月22日に終了し、男子1部リーグのマインツ05から参戦中の村松雄斗が最多勝を挙げ、個人成績ランキング首位に立っている。
欧州最高峰の卓球プロリーグで「YUTO MURAMATSU」はいまや、誰からもマークされる最も“危険な”チョッパーだ。

さらに来シーズンは強豪チームのひとつであるザールブリュッケンへの移籍も決定。1月3日にチームから正式発表されたのに加え、本人もその旨をSNSで報告している。

シングルス4本、ダブルス1本の計5本による団体戦のリーグ男子1部。全12チームが消化した試合はそれぞれ11試合で、そのほとんどに2点起用された村松は14勝3敗、勝率82%を誇るマインツ05の不動のエースである。
ちなみに個人成績2位はリーグ首位を走るボルシア・デュッセルドルフのアントン・シェルベリで10勝0敗。3位には強豪ザールブリュッケンのダルコ・ヨルジッチが10勝1敗で続く。

「マインツ05に入ったのもブンデスリーガに来たのも、間違いじゃなかったと思っています」と話す村松だが、道のりは平坦ではなかった。
何しろエースが白星を稼いでも、チームは最下位。今季2部リーグから1部リーグに昇格したばかりで戦力不足は否めず、シーズン前半戦で2勝を挙げるにとどまった。
さらに村松はカットマンという戦型上、長いキャリアの中で膝に爆弾を抱え、今も右膝にジャンパー膝(膝蓋腱炎)の症状が出ている。そのため痛み止めを打ちながら試合に出ているのだ。

12月4日のノイ・ウルム戦で話を聞いたときも、「痛くて深く曲げられない。けれど他の選手も故障していて休めないし、僕はカットマンでダブルスに出られないのでシングルス2点で勝つしかないんです」と満身創痍。しかし、続けてこうも言う。

「僕以外の選手たちは若くて経験が浅いので仕方がない部分もあります。もちろん、みんな100%の力でやってますし。僕自身は、いっぱい試合ができるチームに来てすごく良かったです。他のチームだったら、こんなに試合に出られないでしょ? 簡単じゃなかったけど、誰よりも試合数が多いから最多勝も挙げられました」

技術面も「フォアハンドの打ちミスが少なくなって攻撃力が上がっている」と村松。
手負いのエースにのしかかる負担は想像を超えるが、何とか怪我と折り合いながら勝ち星を挙げる26歳の背中は若いチームメートたちの士気を上げている。
そんな村松についたニックネームは「ミスター・ツーポイント」。信頼されている証だ。

2016-2017および2017-2018シーズンに次いで自身2度目となるドイツ行きは2022年2月、所属先の実業団チーム・東京アートが突如休部になったことが発端だった。日本にいてTリーグに参戦する道もあったが、チーム数と選手層から考えると十分な出場機会があるとは思えず、ブンデスリーガ参戦を決意。
「100%の状態でプレーできることは少なくても、1勝でも多く勝てるよう自分なりに調整してやっている。1試合1試合って感じです」とめげずにチャンスを掴んできた。
かつては精神面の脆さが指摘されたこともある村松だが、日本にいた時より遥かに強く、たくましくなった。

昨年12月24日に一時帰国した村松は全日本選手権(1月23〜29日/東京体育館)まで日本に滞在し、2月にまたドイツへ戻ってブンデスリーガの今季後半戦に出場予定。
前半戦はカットマンに不慣れな選手との対戦が多く、自身にアドバンテージがあったが、「次からは相手が対策してくるし、僕のカットの変化もある程度、分かっている。慣れられてから勝てる選手が本当に強い選手だと思うので、後半戦も勝っていきたい」と意気込む。

全日本選手権の男子シングルスの組み合わせは日本の若きエース・張本智和と同じブロックの中シードに入った。
張本は昨年10月の世界選手権成都大会男子団体準決勝で中国のエース樊振東と王楚欽を破る快進撃で、昨年末まで世界ランキング2位(現在4位)。今、ノリに乗っている選手だ。できることなら当たりたくないと思うのが当然だろう
だが、村松はこれをチャンスと捉え虎視眈々。厳しいプロの世界で鍛え直した自身の存在をアピールしようと燃えている。

ガッツポーズの村松雄斗選手

「モーレゴードのような選手に勝ちたい。そうすれば話題になる」と貪欲な村松に自信がみなぎる

(文・写真 高樹ミナ/スポーツライター)