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世界選手権ヒューストン大会、シングルスの栄冠は誰の手に?

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丹羽選手が相手のボールを打ち返す様子

11月23日、アメリカ・テキサス州ヒューストンで開幕する世界卓球選手権(個人戦)。1926年から行われている世界卓球が、初めてアメリカ大陸で開催される記念すべき大会。さらに1971年に行われた世界卓球名古屋大会で展開されたアメリカと中国の「ピンポン外交」から50周年の節目の年でもある。まずは記念すべき大会の、男女シングルスの注目選手をチェックしよう。

男子シングルスに日本から出場するのは、丹羽孝希(スヴェンソンホールディングス)、張本智和(木下グループ)、宇田幸矢(明治大)、森薗政崇(BOBSON)、戸上隼輔(明治大)の5人。世界卓球で最も実績を残しているのは世界ランキング19位の丹羽孝希だ。17年デュッセルドルフ大会では、地元ドイツ期待のオフチャロフを大激戦の末に破ってベスト8。19年ブダペスト大会でもベスト8進出を果たし、梁靖崑(中国)と準々決勝でゲームオールの熱戦を展開。日本勢では79年ピョンヤン大会優勝の小野誠治以来となる、40年ぶりの表彰台まであと一歩だった。

11月16日に成田空港で行われた世界代表の会見では、「過去2大会とも準々決勝で中国選手に負けている。自分の力以上のプレーをして中国選手に勝っていきたい」と力強く宣言した丹羽。今大会のエントリーは男子シングルスのみで、1種目に絞ってじっくり調整できる強みもある。三度目のチャレンジで表彰台を狙う。

丹羽孝希
世界選手権2大会連続ベスト8の丹羽孝希

世界ランキング4位の張本智和は、金メダルを狙った東京オリンピックではベスト16という成績だったが、さらに体格が良くなり、前陣で放つ両ハンドドライブは破壊力を増している。代名詞であるチキータからの速攻だけでなく、ストップからの台上の展開に磨きをかけ、メダルを狙う。宇田・森薗・戸上の3選手はシングルスは初出場で、1回戦での入り方が重要になるだろう。森薗には豊富な経験があり、宇田と戸上には上位ランカーをのみ込む爆発力がある。

張本智和選手
世界ランキング4位で大会に臨む張本智和

世界の選手に目を向ければ、中国は世界ランキング2位の許シンと3位の馬龍が欠場。世界ランキング1位の樊振東、前回3位の梁靖崑(世界ランキング9位)が優勝候補の双璧か。東京オリンピックで馬龍をあと一歩まで追い詰めたオフチャロフ(ドイツ)は左足首の故障により欠場するが、韓国の張禹珍や安宰賢、イングランドのピッチフォードなどは中国勢を「食う」実力があり、中国といえども安閑(あんかん)としてはいられない。前回大会で準優勝のファルク(スウェーデン)や許シンを破る金星を挙げたゴーズィ(フランス)、南米の雄・カルデラノ(ブラジル)らも虎視眈々とタイトルを狙う。

樊振東
悲願の初優勝を狙う世界ランキング1位の樊振東(中国)
ピッチフォード
中国勢にも強さを見せるピッチフォード(イングランド)

次に女子シングルスだ。日本からは伊藤美誠(スターツ)、石川佳純(全農)、平野美宇(日本生命)、早田ひな(日本生命)、芝田沙季(ミキハウス)の5人が出場する。東京オリンピックで日本に女子シングルス初のメダル(銅メダル)をもたらした伊藤美誠は、出発前の会見でも「オリンピックの時よりも強い自分であると信じていますし、すごく楽しみです」とオリンピック後の強化にも自信をのぞかせる。東京オリンピック金メダリストの陳夢と銀メダリストの孫穎莎、そのふたりとともに団体金メダルを獲得した王曼ユという中国の「3強」は、他国にとって高い壁だが、伊藤は闘志満々だ。

伊藤美誠
東京五輪の銅メダルにも満足することなく、世界卓球の頂点を狙う伊藤美誠

他の日本勢では、アジア選手権で3冠を獲得した早田に勢いがある。「アジア選手権では3種目を戦うために体力切れを起こさないよう、無駄な力を使わずに強いボールを打つことを強化してきた」と会見でコメント。かつて右ひざの故障に悩まされた経験があり、体のメンテナンスへの意識も人一倍高い早田、3種目へのフルエントリーでも体力面に不安はない。過去2回ベスト8に入っている石川、前々回大会で日本女子48年ぶりのメダル(銅メダル)を獲得した平野も有力な優勝候補。24歳で世界卓球初出場の芝田は、パワーヒッターとしての持ち味を存分に発揮してもらいたい。

女子シングルスは先に挙げた中国の「3強」が優勝戦線をリードするが、中国勢を脅かす意外なダークホースが現れるかもしれない。世界卓球への出場資格を得て初出場のカット型、ハン・イン(ドイツ)は対カットに不安の残る陳夢や王曼ユには手強い相手。さらに今大会最年長の58歳(!)、倪夏蓮(ルクセンブルク)がスロベニアでのWTTで、今大会の中国代表である王芸迪を破り、健在ぶりをアピールしている。韓国女子のホープ申裕斌や、地元アメリカのリリー・チャンの活躍も楽しみだ。

陳夢
東京五輪金メダリストの陳夢は懐の深いバックハンドが最大の武器