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江加良氏の世界卓球(卓球世界選手権)2019 ①世界卓球の今昔編

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江加良氏の世界卓球(卓球世界選手権)2019 ①世界卓球の今昔編

全4回に渡り元世界チャンピオンの江加良氏に2019年世界卓球ブダペスト大会の観戦所感を語っていただいた。第1回目の今回は『世界卓球今昔 編』。


VICTASジャーナルをご覧のみなさん、こんにちは!
江加良です。まず私自身についてご紹介します。

1964年 中国広東中山生まれ
1983年 第37回世界選手権 男子団体優勝,シングルス準優勝,男子ダブルス3位
1984年 第4回ワールドカップ 男子シングルス優勝
1985年 第38回世界選手権 男子団体優勝、男子シングルス優勝、男子ダブルス3位
1987年 第39回世界選手権 男子団体優勝、男子シングルス優勝、混合ダブルス準優勝

この度、技術フェローとしてVICTASの一員になりました。
今回ハンガリー・ブダペストで開催された世界選手権個人戦では、ダブルス、シングルス、混合ダブルスがありますが、ここではVICTASのウェブサイトやVICTASジャーナルを通じて、皆さんと世界選手権についての私の体験を共有していきたいと考えています。どうぞよろしくお願い致します。

世界卓球選手権大会、プロツアーと選手の関係について

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30年以上前の世界選手権は現在の世界選手権とは大きく異なり、昔は個人戦、団体戦を含む7つの種目が1つの場所で一度に開催され、2年に1度開催されていました。スコアは21点制、個人戦は5ゲームスマッチで団体戦は3ゲームスマッチでした。今は団体戦が2年に1回、個人戦も2年に1回、毎年交互に開催されています。この二つの大会はプロ選手にとって最高の栄誉が与えられる最も素晴らしい大会だと思います。最も懸念されるのは近年賞金がかかる試合が多すぎて、プロ選手は往々にして怪我をしやすく、また、早期にリハビリ期間を必要とし、十分な休息と治療を得ることができずに、才能のある選手はすぐに姿を消してしまうことです。
水谷隼もこのような状況にあったことを同情し、理解しています。若い選手がフィジカル、技術共に彼を越え始め、彼は心身ともに疲弊し引退したいと思っていたでしょう。私の経験では、彼は口ではそう言っていますが実際は悔しさがあるはずです。卓球はあなたの職業で、卓球はあなたの生きる道であり、私はあなたが天才選手だと思っていますので、今後10年も選手として活躍し、ファンを失望させないことを望んでいます。

混合ダブルスにおける重要なポイントについて

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実は、混合ダブルスは男子ダブルスと比べてより戦術が重要になります。中国では戦略上、コイントスで第一ゲームに男子の打つボールに対して男子が受けるのか女子が受けるのかが重要なアドバンテージを決めると言われています。ペア選手のコミュニケーションは非常に重要で、できるだけパートナーに自分の意図を知らせなければいけません。シングルスは自分の好きなように打つことができますが、ダブルスはまず仲間のためのチャンスを作るために、ボールをコントロールすることが大切になります。男子選手は、得点源の主役となり、女子選手は自身の無駄なミスを最小限に抑えなければいけません。相手の男子選手のボールに負けてしまっても、相手の女子選手より多くの点数を取れば良いのです。必要に応じて、パートナーの男子選手が一時的に悪い状態の時は素早くフォローしなければいけません。最後には試合表に勝利のサインすることが一番重要なのです。

個人戦と団体戦の違い、現代卓球で勝つために

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現在の試合のレベルは益々素晴らしくなっていて、実力は均衡しています。個人戦が緊張して刺激的なのは1回の試合に負けることはもう二度と打つ機会がないことに等しいので、個人戦は団体戦よりも高いレベルを要求されている点です。団体戦では個人的には負けたとしても全体的に勝てば自分の手柄になります。個人戦の試合は完全に独立して戦っているため、作戦の能力はより全面的に要求され、次の対戦相手も予想しなければいけません。右利きなのか左利きなのか、攻撃型なのか守備型なのか、自分が良いボールを打つだけでなく、抽選で決まった対戦相手にも常に気をつけて、事前に対戦相手の試合を見て、その特徴を研究してこそ、己を知り百戦百勝を達成することができます。

メンタルと戦術について

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※写真:ITTF

女子シングルスの伊藤美誠の試合と混合ダブルスの石川佳純、吉村真晴ペアの試合を見て、伊藤の試合は負け、混合ダブルスの試合は勝利しましたが、選手たちは試合では消極的だったように見えました。消極的になると自分の位置を低く捉えがちで相手に挑戦する準備ができていないですし、反対に相手は必死に勝とうとしてきます。それらが技術に影響を与え、戦術の発揮にも影響を与えてしまうのではないでしょうか。


次回は『シングルス編』を公開致します。
乞うご期待ください。