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世界頂上戦の舞台は南アフリカ。日本男子、44年ぶりの単メダル獲得はあるか?

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練習する張本選手

5月20〜28日、南アフリカ・ダーバンで行われる第57回世界卓球選手権個人戦。その開幕がいよいよ迫ってきた。日本選手団は5月14日の深夜(15日午前0時5分)に日本を出発し、中東のドバイでの乗り継ぎを経てダーバンに到着。17日から現地で練習を行っている。

 男女とも代表各5名がダーバン大会に出場する日本男女チーム。5月10日に男子チームの篠塚大登(愛知工業大)が、腰の故障のために出場を辞退した。篠塚は男子シングルス・ダブルス、混合ダブルスの3種目にフルエントリーしており、男子シングルスと混合ダブルス(木原美悠とのペア)は、戸上隼輔(明治大)とのペアで男子ダブルスに出場予定だった宇田幸矢が代替出場。男子ダブルスは張本智和(智和企画)/篠塚ペアから、張本/吉村真晴(TEAM MAHARU)ペアにエントリー変更となった。

 まずは日本男子が挑む「世界の頂上決定戦」、男子シングルスの見どころからチェックしていこう。頂上への最短距離にいるのは、やはり世界ランキング4位の張本智和。昨年の世界選手権団体戦・成都大会で、準決勝で王楚欽と樊振東を連破し、中国から2点を奪った記憶は未だ鮮烈だ。

 一方で、世界選手権での成績は初出場の2017年大会で、14歳でベスト8入りを果たして世界に衝撃を与えた後、19年大会でベスト16、21年大会は2回戦敗退と結果を残せていない。張本自身も「中国とやれば自然と100%の力が出せるけど、まずは中国への挑戦権を手にすることが大事。そこまでの道のりのほうが大変だと思う」と冷静に分析している。
 南アフリカは13歳で出場した2016年の世界ジュニアで、史上最年少優勝を果たした「思い出の地」。「思い切ったプレーや、中国選手に勝つというイメージがある舞台」(張本)で、初戦から挑戦者として戦っていけば、自ずと結果はついてくるはずだ。

練習する張本選手
フォアハンドの強化に取り組んできた張本、その成果をダーバン大会でも見せたい

 その張本に5月6〜7日の全農CUP平塚大会・決勝で勝利した戸上隼輔は、3月のWTTシンガポールスマッシュでは東京五輪銅メダリストのオフチャロフ(ドイツ)にも勝利。4月のWTTチャンピオンズ
マカオでは林昀儒(チャイニーズタイペイ)をゲームオールまで追い詰めるなど、世界のトップランカーとも互角に戦える力が備わりつつある。

 前回の21年ヒューストン大会では3回戦に進出したものの、王楚欽にサービス・レシーブから圧倒され、ショックを隠せなかった。「サービス・レシーブを重点的に強化してきて、かなり成長できていると思う。そして下がって打ち合う展開になれば得点できるという自信も持っています」(戸上)。48位という世界ランキングから、早いラウンドで上位選手と当たることが予想されるが、若き全日本王者の戦いぶりやいかに。

練習する戸上選手
全日本2連覇の戸上隼輔は、国際大会でもトップ選手と互角以上の勝負ができるようになってきた

残る男子シングルスの出場者は、個人戦初出場の及川瑞基(木下グループ/世界ランキング67位)、2017年世界混合複優勝ながら男子シングルスは初出場の吉村真晴(TEAM MAHARU/世界ランキング67位)、そして世界ランキングでは日本男子で張本に次ぐ2番手(20位)につける宇田幸矢だ。

 及川は昨年の世界選手権団体戦・準決勝で馬龍(中国)と対戦し、1ゲームを奪った経験を糧に、今大会に向けて食生活も節制して気合い十分。「前陣での両ハンドのパワー卓球が世界の主流ですが、ぼくは小柄なので試合運びのうまさや緩急も使いながら自分のリズムに持ち込みたい」と語る。吉村は16年リオ五輪での団体銀メダルなどの実績を考えれば、まさに「満を持して」のシングルス出場。「自分を支えてきてくれた人たちに『一緒に練習して良かった』『代表として出てもらって良かった』と感じてもらえるプレーがしたい」と闘志を燃やす。得意の変化サービスが炸裂すれば、大物食いも十分に期待できる。

練習する吉村選手
2017年世界混合複チャンピオンの吉村真晴、ついに世界選手権のシングルスに初出場

 篠塚からバトンを受け継ぐ形で3種目にフル出場する宇田は、爆発力はお墨付き。チキータ一辺倒のプレーから脱却すべく、昨年からドイツ・ブンデスリーガでも経験を積み、フォア前にサービスを集められても対応できる技術力がついてきた。前回、銅メダルを獲得した戸上とのダブルスは、厚い信頼関係で結ばれた強打者ペア。「どちらかの調子が悪い時は、どちらかがカバーできるのが強み」と語り、2大会連続の表彰台を狙う。

 近年、ヨーロッパからアジアの壁を破る実力者が次々に登場している男子卓球界。ドイツのチウ・ダンやドゥダ、右シェークドライブのアレクシスと右ペンドライブのフェリックスのルブラン兄弟(フランス)、世界一のバックハンドの使い手・ヨルジッチ(スロベニア)、前回2位の北欧の鬼才・モーレゴード(スウェーデン)と枚挙にいとまがない。前回王者の樊振東が牽引する中国をはじめ、アジア勢も油断のできないハードバトルだ。地元アフリカ勢では、WTTシンガポールスマッシュで張本をノックアウトしたアルナ(ナイジェリア)にメダルの期待がかかる。

世界ランク1位の中国選手
現・世界王者で世界ランキング1位の樊振東、大会2連覇を狙う
フランスのルブラン選手
フランスの鬼才、A.ルブランは大会のダークホースのひとり(写真提供:WTT)
ナイジェリアのアルナ選手
アフリカ初の男子シングルスの表彰台を目指すアルナ