玄 静和 Hyun Junghwa

1980年代後半から1990年代前半にかけて、世界選手権で女子シングルス、ダブルス、団体の全種目を制覇、また世界選手権のシングルス優勝は韓国史上ただ一人という偉業を成し遂げている玄静和。
鋭いカウンタースマッシュと、変幻自在の速攻プレーを武器に一時代を築き上げた選手だ。

1988年、地元韓国・ソウルで開催されたソウル五輪では梁英子と組んだ女子ダブルスで金メダルを獲得した。
ソウル五輪が開催される前年の1987年世界選手権ニューデリー大会で、玄静和は梁英子と組んだ女子ダブルスで金メダルを獲得しており、国中からの期待を一身に背負い臨んだのがこのソウル五輪であった。
「1988年のソウル五輪は、卓球が五輪で正式種目に採択された初の五輪だったので、国中から大きく期待されていました。
その期待に応えるため、五輪に向けて梁英子先輩と一緒に3年間時間をかけて準備しました。
当時、一日の8割以上をダブルスの練習に費やしましたね。
やはり国中の方々が私たちのダブルスの金メダルを期待していましたので。
（女子ダブルスで優勝した時）皆さんの期待に応えて金メダルを取ることができて安心しました。
でも個人的には“韓国で開いた初の五輪で金メダルを獲得した”ということが本当に栄光でした。」
接戦の末2-1で中国ペアを破り、優勝した瞬間、大観衆は興奮に包まれ、二人は熱い涙を流し抱き合い、喜びをかみしめていた。

「印象に残っている世界大会は1991年の世界卓球選手権千葉大会、北朝鮮との南北単一チームでの団体優勝の時と1993年世界選手権イエテボリ大会のシングルスで優勝した時が一番記憶に残っています。」
1991年世界卓球選手権千葉大会、大会開催の2か月前、“南北朝鮮統一チーム合意”というビッグニュースが世界中を駆け巡った。
それぞれ独立した協会を持つ南北朝鮮が統一チームとして団体戦を行い、個人戦ではそれぞれの協会が従来のエントリー枠で参加するという特例扱いであった。
まさに歴史的なチームであった南北朝鮮統一チームは同大会で3-2の大接戦の末、中国を破り、女子団体優勝を飾った。
玄静和は前年に開催されたアジア競技大会で完敗していた中国選手に見事リベンジを果たし、歴史的な優勝に貢献した。
「まず、栄光をもたらしてくれた神様に感謝します。この優勝は、コリアの民族の力がいかに大きいかを物語った」（TSPトピックス1991年7月号より）と語っている。

1993年世界選手権イエテボリ大会、女子シングルスで優勝した玄静和は、世界選手権初出場以来、4大会を通じて、全種目制覇という偉業を達成した。
1987年ニューデリー大会、梁英子と組んだ女子ダブルスで優勝
1987年ドルトムント大会、劉南奎と組んだミックスダブルスで優勝
1991年千葉大会、統一チーム「コリア」のエースとして団体優勝
1993年イエテボリ大会で唯一残されたシングルスのタイトルを獲得

1993年イエテボリ大会女子シングルス優勝後の記者会見では
「決勝はストレート勝ちで簡単に勝ったように見えるかもしれませんけど、陳静（中国）は元五輪金メダリスト（1988年ソウル五輪）、勝つのは難しいと思っていました。
チャンピオンになるのに近道はない。毎日の練習でいつもベストを尽くすこと、試合中の1本1本に自分のベストを尽くすことだけを考えてきたのです。」（1993年TSPトピックス8月号より）と語っている。

1992年のバルセロナ五輪後に体調を崩し、最後の力を振り絞りながら、イエテボリ大会を戦い、先輩の梁英子が果たせなかったシングルスの世界チャンピオンという夢を、玄静和はつかんだ。
この世界タイトルを獲得した時、彼女と共に、チャンピオンラバーとして歴史に名を刻んだのがTSPの表ソフトラバー『スペクトル・スピード』。
「スペクトル・スピードを初めて使った時、他の表ソフトの粒と比べてスピードとパワーがあって、スマッシュとドライブで得点力がもっと出るラバーだと感じました。」
最大の武器である完璧なバックブロックとフォアの連続スマッシュ、彼女の速攻プレーを支え、実現させた表ソフトであった。

当時を振り返って
「TSPは私を家族みたいによくしてくれたメーカーでした。
（当時のヤマト卓球本社があった）大阪にも良く行きましたね。その時の記憶がいい思い出として残っています。」と懐かしそうに語った。

世界チャンピオンを支えたTSPの技術はVICTASへと引き継がれていく。